糖尿病について知ろう!~糖尿病の治療・・・

糖尿病の治療の目的は血糖値を正常にし、高血糖にしない
ようにすることです。

大きくわけて2つ、
まず、現在の血糖値を高くしないで、高血糖状態によって引き
起こされる症状や危険な状態(高血糖昏睡など)を回避する
ことです。
2つめに血糖コントロールを良い状態で長く継続させて、高血糖
による合併症の出現をくいとめることです。
         
治療の方法は、さまざまあります。
風邪のときのように皆がほぼ同じ薬を飲めばよいといった
ものではありません。

インスリンの分泌能力、肥満度、合併症の程度、年齢、
家族や周囲の人の協力体制などで変わってきます。

しかし、そのなかでも、食事療法と運動療法はすべての
糖尿病の人が実行しなくてはなりません。
その後、どうしても血糖コントロールがつかない場合には、
経口血糖降下剤やインスリン療法の適応になります。
 
治療の3本柱
   食事療法
糖尿病は体のエネルギー処理がうまくできない状態です。

原則としては少ないエネルギーを摂取して、多くのエネルギー
を使うようにすることが必要になってきます。
続けることで体は自然にエネルギーを大切に、効率よく
使えるようになるでしょう。

また、運動が好きな方は運動を十分していればいいという
考えの方が多くいらっしゃいます。
食事の方が普通に考えるより大きなエネルギーをもっています。
食事でとったエネルギーを運動で全部消費することは不可能
に近いことです。

②運動療法
余分なエネルギーを運動で消費し、血糖を筋肉などに効率よく
利用させる状態に保つことが目的です。
毎日続けて、少しずつエネルギー消費型の体質になるように
しましょう。

誰にでも手軽で負担がなく、効率的な方法としてはウォーキング
がおすすめです。

③薬物療法
経口血糖降下剤とインスリンの注射療法があります。
経口血糖降下剤は服用しているからといって、食事療法を
おざなりにしていると、体重が増えたりして薬の効果がないような
状態に陥ることがあるので、食事・運動療法は続けましょう。

インスリンは、注射でしか体内投与できません。
また、インスリンの種類や投与方法によって、食事療法の管理
方法も変わります。
インスリンに合わせた微調整が必要になります。
 
今回は、3回にわたり、糖尿病について簡単にお伝えしました。

糖尿病の治療の基本は本来もっとも正しい食生活に戻る、といった
ものであり、けっして特別な病人食を無理やり強制して食べ続け
なければならないといったものではありません。

糖尿病がある方もない方も食事、運動を基本に健康的な食生活を
めざしましょう。
 
また糖尿病の治療は個々によって、違ってきますので、健診などで
糖尿病といわれた方は病院で受診しましょう。
食事療法については、栄養相談を利用しましょう。

糖尿病について知ろう!~糖尿病の合併症・・・

糖尿病は治療をおこたっていると、長期間にわたり高血糖の
状態を続けることになります。
その結果、全身の臓器に異常が起きてきてしまうのです。
それが、糖尿病の合併症といわれるものです。
そして障害が非常に起りやすい部分が3つ(神経・網膜・腎臓)
あり、三大合併症といわれています。

     糖尿病性神経障害

糖尿病の初期から起きやすいとされます。
いろいろな神経系統の異常をきたし、なかでも四肢の
末梢の感覚神経と自律神経に障害が起りやすいです。

手足のしびれや感覚の鈍り、冷え、足の壊疽、勃起不全、
便秘、下痢、立ちくらみ、排尿困難などがあります。


     糖尿病性網膜症
眼球の後ろにある網膜の血管に異常が起きてきます。
糖尿病発症後5年くらいすると、軽症な血管の変化を
認めることが多くなります。

治療をせずに放置すると大出血につながり、失明に至って
しまう怖いものです。


     糖尿病性腎症
良いコントロールが得られないまま10年以上放置すると、
尿中に大量のたんぱく質が漏れ、ネフローゼ症候群を
きたします。

そのまま過ぎると、腎機能が急速に低下して腎不全となり、
人工透析を受けなくてはならなくなります。
非常に管理や治療が困難になります。

  

その他、いろいろな合併症になります・・・
 感染症   ・・・血糖のコントロールが悪いときに感染症にかかると
                    治りにくくなります。

  動脈硬化・・・一般に動脈硬化が進みやすくなります。
                    過食やインスリン(血糖を下げるホルモン)量過多に
                    よって、コレステロールの沈着が進み、心臓病や
                    脳梗塞を引き起こしやすくなります。
                              
 
 歯槽膿漏、皮膚乾燥など
 

糖尿病の場合は、病気が重症か軽症かは、合併症の程度に
よって判断されます。
しかし、人によっては、受けている治療の形によって自己判断
する方もいらっしゃいます。
 
食事や運動などの一般療法だけの場合、インスリン療法を受けて
いる場合よりも軽症と考えることが多いのです。
食事・運動療法のみの方でも合併症が進んでしまう方もいらっしゃ
います。
治療の形で重症度は決められませんので、思い込みは危険です。
病院での治療、自己管理(食事、運動、生活習慣)を合わせて
やっていきましょう。
 
治療内容や食事について詳しく知りたい方は、個々の状態によっても
治療が異なってきますので、病院での受診・栄養相談をぜひ受けて
ください。

次回は糖尿病の治療についてお伝えします。

糖尿病について知ろう!~糖尿病とは・・・

今回から、3回にわたり、糖尿病について簡単にお話しを
したいと思います。

まず、日本には糖尿病の人はどのくらいいるのでしょうか。
平成20年12月に
「平成19年国民健康・栄養調査の結果の概要」が発表され
ました。
「糖尿病が強く疑われる人」は平成9年の約690万人から
約890万人へと約200万人増加となりました。
 
 「糖尿病が強く疑われる人」、「糖尿病の可能性が否定できない人」の推計
(平成9年,平成19年)
 
平成9年
平成19年
「糖尿病が強く疑われる人」
約690万人
約890万人
「糖尿病の可能性が否定できない人」
約680万人
約1,320万人
「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性が否定できない人」の合計
約1,370万人
約2,210万人
厚生労働省「平成19年国民健康・栄養調査結果の概要」より
 
糖尿病人口が増え続けていますが、糖尿病とはどんな
病気なのでしょうか。
 
糖尿病はどんな状態かというと、ひとことでいえば
エネルギーの効率が悪化した状態といえます。
エネルギー(食事)が体に入ったあと、上手に利用できな
かった余分なエネルギーが血液のなかの糖分となって
あらわれてきてしまうのです。
これにより血液中の糖分の濃度(血糖値)が高くなり、
さまざまな障害を起してくるのが糖尿病です。
 
「糖尿病になってしまうと一生治らないのですか?」と
聞かれることもたびたびですが、確かに治らない病気です。
人の体のエネルギーの効率を根本的に変えることは、
体質を変えることと同様に難しいのです。
一時的にコントロールがよくなっても、運動不足、食べすぎの
毎日を続ければ、再び効率の悪い状態に戻ってしまいます。
 
    

 
しかし、糖尿病は取り組み次第で一生治ったと同じ状態を
維持できる病気です。
糖尿病は治らないけれども、きちんとした管理を続ければ
一生よい状態を保つことができるのです。
 

(糖尿病の種類・・・)
糖尿病は大きく分けて、1型・2型・そのほかの特定の機序、
疾患によるもの・妊娠糖尿病と4つに分けられます。
生活習慣病といわれている糖尿病の方はほぼ2型ということ
になるかと思われます。
もともと家族などに糖尿病の方がいて、糖尿病になる体質
であり、そこに運動不足や過食などを続けるなどの生活
習慣や環境によって、糖尿病となってしまうケースがほとんど
です。
 
もし、あなたが糖尿病になりやすい体質でしたら、早めに
食事、生活習慣の見直しをしていきましょう。
そして、糖尿病といわれた方は早めに受診し、治療を開始
しましょう。
次回は、糖尿病の合併症についてお伝えします。

糖尿病の食事相談~近年の食事相談の形とは~

私たち、管理栄養士のもとには先生から
「「栄養士さんに糖尿病の食事をきいてきて」といわれました。」
という患者さんが毎日いらっしゃいます。
まず「食事相談をうけなければいけない」ということにネガティブに
思う方もたくさんいらっしゃいます。
 
社会環境の変化により糖尿病患者が増えたように、食事療法も
食環境の変化の影響を受けてきました。
糖尿病の患者さんが一度は目にしたことがあるような「食品交換表」
が検討され始めたのが、1960年ごろ。
当時はたんぱく質摂取量が少なかったので、たんぱく質が不足しない
ように配慮されていました。
その後、食生活の欧米化が進み、現在の「食品交換表」は脂質を
調整、動脈硬化予防の観点から植物性脂肪や食物繊維を増やし
たりするように配慮されてきました。
 
「食品交換表」に変化があったように、食事相談という形も時代の
流れによって変化してきています。
初診で糖尿病患者さんがいらっしゃっても、「食品交換表」の説明を
いきなり始めるということは最近ではみられなくなりました。
 
相談の流れは次のようになります。
食生活を聞き、問題点を一緒に考えます。
        ↓
必要性や難しさを説明します。
        ↓
食生活で変えられる点をしぼります。
        ↓
必要なら食品交換表をもちいて相談します。
        ↓
外食に対応できるようにします。
といった感じでしょうか。
 
食事という最も基本的な生活習慣の変更を必要とするので、
患者さんにとってそれが何より大変であることを、相談側は理解
しています。
初めて「糖尿病」だと聞くと、治療や合併症に対する不安、落胆、
自由が奪われるような気持ちや家族や友人の関係が変わるのでは
といったことなど、さまざま頭をかけめぐることでしょう。
 
しかし、糖尿病食は健康食ともいわれ、糖尿病をお持ちで食事療法を
必要とする方だけでなく、糖尿病をお持ちでない方にとっても健康を
維持するために最適な食事なのです。
糖尿病の食事相談(療法)の目的は、食事内容や食べ方を提案して、
糖尿病に関わる合併症の予防をしていくことです。
 
最近の食事相談は、取り調べのような雰囲気で聴取するようなことは
なくなってきました。(安心してください!)
一人では難しくても誰かと一緒なら続けられます。
ご一緒に食生活を改善していきましょう。