炭水化物part4~食物繊維のいろいろ、糖質・糖類の違い~

●食物繊維のいろいろ
食物繊維は大きく分けると水溶性、不溶性があります。

不溶性のものには穀類や野菜に多く含まれるセルロースやリグニンなど、
水溶性のものには果物に多く含まれるペクチンなどがあり、色々な生理
作用をもっています。

特定の食品に頼らず、組み合わせてとりましょう。

 
【350gの野菜】
「健康日本21(厚生労働省による健康づくり運動)」では、1日350g以上の
野菜をとることが推奨されています。

食物繊維、カリウム、抗酸化成分は循環器疾患やがんの予防に効果が
あると考えられています。
これらの成分をとるのに野菜の寄与が大きく、350g以上の野菜をとることが
必要と推定されています。
野菜を350~400g食べると、食物繊維は約18g摂取することができます。
 
【人工の食物繊維】
飲料などの加工食品によく利用されているポリデキストロースなどの水溶性
の食物繊維があります。
分子量が天然の食物繊維より小さいので、作用は天然のものより弱いと
考えられています。
 
【オリゴ糖】
オリゴ糖は単糖類が何個かつながったものです。
消化されにくいものがあり、難消化性オリゴ糖と呼ばれ、広い意味では
食物繊維に分類されます。
 (一般には糖質として扱われることが多いようですが)

腸内細菌の栄養となり、腸内環境を改善してくれる働きがあります。
便秘の解消に役立ち、「おなかの調子を整えたいかたに適する食品」として
特定保健用食品となっています。

甘味料としても用いられ、エネルギー量は砂糖の約半分。

 
●糖質・糖類の違いは?
「糖質オフ!」「糖類ゼロ!」などといった商品がありますね。
違いは何でしょうか。
「糖質」は「炭水化物」から食物繊維をのぞいたものです。
「糖類」は単糖類(ぶどう糖、果糖等)と二糖類(しょ糖(砂糖)等)のことです。
 
つまり多糖類である、でんぷんは「糖類」に入りません。
 
飲み物などで糖類が使われていないのに甘い製品があるのは糖アルコール
や非糖質系甘味料等が入っているからです。
 
炭水化物-食物繊維=糖質
炭水化物>糖質>糖類
糖類は糖質の一部ということです。

「糖分」となると、あいまいになってきます。
糖類の中でも甘いもの、糖の量を指しているようです。

炭水化物part3~食物繊維の体内での働き、どのくらいとればいい?~

食物繊維は「ヒトの消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」
に難消化性オリゴ糖などを含めたものをいいます。

食物繊維は、水にとけない「不溶性食物繊維」と水にとける「水溶性食物繊維」
とに大きく分けられます。
 
【不溶性食物繊維の働き】
腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を盛んにして、食べた食品の通過時間を短く
します。
便の量を増やし、便の排泄を促します。
そういった働きが腸内環境を改善して便秘や腸の病気予防に役立ちます。
 
【水溶性食物繊維の働き】
水分を吸収して、ふくらみ、食べた食品の胃での滞留時間を長くさせます。
小腸で糖が吸収されるときに、ふくらんだ水溶性食物繊維によって、糖が
消化酵素と接しにくくなるため血糖値の上昇がおだやかになります。

またコレステロールの吸収もさまたげ、排出されやすくします。
そういった働きが糖尿病や脂質異常症の予防、改善に役立ちます。

 
【どのくらいとればいい?】
1日に必要な排便量から見たときの食物繊維の摂取量は12025gといわ
れています。
野菜、きのこ、海藻類に多いので積極的にとりたいです。
 
<食物繊維を多く含む主な食品>
玄米ごはん・・・100g1.4g(ごはん1150g2.1g
ゆで大豆    ・・・100g7.0g150g3.5g
ごぼう         ・・・100g5.7g1/450g2.9g
ブロッコリー・・・100g4.4g1/460g2.6g
えのきたけ ・・・100g3.9g1/240g1.6g
ひじき         ・・・100g43.3g(大さじ15g2.2g
                                  など・・・
 
【もし不足したら・・・】
排便がスムーズにおこなわれなくなり、便秘になります。
 
【とりすぎたら・・・】
通常、食事で大量にとることは、難しいのでとりすぎることはありません。
難消化性オリゴ糖を添加した食品を大量にとると便がゆるくなることが
あります。
またサプリメントなどで大量にとると下痢をおこしたり、必要な栄養素の
吸収のさまたげになったりする場合もあります。

炭水化物part2~低炭水化物ダイエット?再流行?~

外来では、「ごはんをぬいたら、どうだろう?」という質問もよくあります。
また最近では芸能人の行なった「肉ダイエット」や「魚ダイエット」など、
単品に頼る減量方法を取り上げた番組も報道されています。
  

                                                        

7~8年くらい前に流行った「低炭水化物ダイエット」をご存知ですか?
『炭水化物の摂取でインスリンの分泌が過剰になり、満腹感を感じる
ことができなくなる。
炭水化物を欲してやめられなくなる「炭水化物中毒」になるので、炭水
化物の量を減らしましょう』とすすめているものでした。

「肉ダイエット」「魚ダイエット」と名前は違っても、方法としては、主食や
その他の食品を抜く偏ったものです。
「炭水化物中毒」という存在は認められていません。
肥満者が医師の管理のもと、治療上「糖質」を制限するのは別として、
健康な人にはすすめられないダイエット法ですので注意しましょう。
                                                                 
炭水化物は重要なエネルギー源です。
エネルギー源にはほかに脂質とたんぱく質があり、いずれかで必要な
エネルギーを満たせばよいというものではなく、それぞれが体に必要で、
バランスよくとることが重要なのです。
一般的には、1日の必要なカロリーに対して、たんぱく質15~20%、
脂質25%以下、糖質約60%が理想的な割合です。
 
どちらにしても、無理な食生活は続けられないのでリバウンドしたり、
体調を崩したりします。
単品での食事制限で急激にやせた芸能人たちもリバウンドしている人
がたくさんいます。
骨や筋肉が一緒に落ちるので、体脂肪率が増え、さらに太ってしまうこと
もあります。

急激に減量しても、維持できなければ成功とは言えません。
少しずつ生活習慣を改善しなければ、良い状態は維持できないでしょう。