脂質part4~コレステロールは悪者なのか~

脂質はそのままでは水にとけないので、リポたんぱく質という物質と結合して
血液中にとけて運ばれています。
そのリポたんぱく質の種類によって働きが異なりHDL、LDLコレステロールと
呼ばれています。
コレステロール自体は同じものです。
 
【体内での働き】
コレステロールは細胞膜の構成成分です。
またホルモンの原料にもなります。
脂質の吸収に必要な胆汁酸の原料にもなります。
胆汁酸が不足すると脂溶性のビタミンの吸収も悪くなってしまいます。
他、ビタミンDは食事からとる他に体内でも作られますが、皮膚のコレステロール
から作られる物質が日光に当たることでも合成されています。
 
【とりすぎると】
ご存知のように、血中コレステロール値が高くなります。
そのため虚血性心疾患のリスクが高まる可能性が危惧されています。
食事からとるコレステロールが血中コレステロール値に与える影響は体重の
多い人に比べて、低い人で顕著との報告もあります。
 
【どのくらいとればいい?】
コレステロールは毎日一定量必要になるので体内で作る機能があります。
1日あたり600~650mg(体重50kgの人)作られます。
多く摂取した場合、心筋梗塞など発症率が増加する可能性があるため、
上限量が設けられました。
体内で合成できるので、下限量は設けられていません。
 
コレステロールの摂取基準
年齢
男性
女性
目標量(上限)
目標量(上限)
18歳~
750mg未満
600mg未満
 
【食品中のコレステロール量】
卵50g・・・コレステロール210mg(ほとんどが卵黄に含まれる)

鶏レバー焼き鳥2本(60g)・・・コレステロール222mg
若鶏手羽肉(80g)・・・コレステロール96mg

うなぎ蒲焼1串(100g)・・・コレステロール230mg
スルメイカ(60g)・・・コレステロール162mg
ししゃも3尾(50g)・・・コレステロール115mg
すじこ一口大(25g)・・・コレステロール128mg
 
コレステロールの高い人では300mg以下が摂取目安量です。
食事で気をつけていても、間食やお酒のつまみには気をつけない、という方も
多く見られます。
「そんなに食べていないのに・・・」の中に菓子の原料やつまみの種類は入って
いますか?
意識して気をつけましょう。

脂質part3~不飽和脂肪酸はいいのかな?~

不飽和脂肪酸は炭素の二重結合の数によって、一価不飽和脂肪酸と
多価不飽和脂肪酸に分けられます。
 
《一価不飽和脂肪酸》
脂肪酸の炭素の二重結合が1個だけ含まれるものを一価不飽和脂肪酸
といいます。
常温では液体です。
オリーブ油やサフラワー油に多く含まれます。
酸化しにくく過酸化脂質となりにくいので、動脈硬化の予防効果が期待
されています。
一価不飽和脂肪酸による研究報告が十分にないので「食事摂取基準」では
具体的な数値は設定されていません。
 
《多価不飽和脂肪酸》
炭素の二重結合を2個以上含むものをいいます。
食事から摂取する必要があります。
構造によってn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸に大別できます。
(ω―6系、ω―3系という場合もあります)
 
(n-6系脂肪酸)
食事から摂取しなければならない必須脂肪酸の代表、リノール酸、
γ-リノレン酸、アラキドン酸の3種類が知られています。
血液中のコレステロール量を減らす作用があります。
しかしとりすぎるとHDLコレステロールも減ってしまうので要注意です。

n-6系脂肪酸の摂取基準
年齢
男性
女性
目安量
目標量(上限)
目標量
目標量(上限)
18~29歳
11g
10%未満
9g
10%未満
30~49歳
10g
10%未満
9g
10%未満
50~69歳
10g
10%未満
8g
10%未満
70歳以上
8g
10%未満
7g
10%未満
    目安量はg、目標量は%エネルギーで示されています。
    18歳以上では過剰の害を考慮して目標量(上限)も設定されています。
 
(n-3系脂肪酸)
α-リノレン酸、イコサペンタエン酸(IPAまたはEPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)
の3種がよく知られています。
魚油、えごま油などに多く含まれます。
血液中のLDLコレステロールや中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを上昇
させる働きがあります。
n-3系脂肪酸の摂取基準
年齢
男性
女性
目標量(下限)
目標量(下限)
18~29歳
2.1g以上
1.8g以上
30~49歳
2.2g以上
1.8g以上
50~69歳
2.4g以上
2.1g以上
70歳以上
2.2g以上
1.8g以上
    虚血性心疾患の予防効果を考慮して18歳以上では目標量(下限)が設定されています。
※目標量ではIPA(EPA)およびDHAを1g/日以上摂取することが望ましい。
 
【食品中のn-6系、n-3系脂肪酸量】

(油)
ごま油(100g)・・・n-6系脂肪酸40.9g、n-3系脂肪酸0.3g
大豆油(100g)・・・n-6系脂肪酸49.7g、n-3系脂肪酸6.1g

(魚類)
さば(100g) ・・・n-6系脂肪酸0.3g、n-3系脂肪酸1.5g
さんま(100g)・・・n-6系脂肪酸0.5g、n-3系脂肪酸4.0g
ぶり(100g)・・・n-6系脂肪酸0.4g、n-3系脂肪酸3.4g
まぐろトロ(100g)・・・n-6系脂肪酸0.6g、n-3系脂肪酸5.8g
 
LDLコレステロールの高い方は肉中心の食事から魚中心の食事に変え
ましょう。
同じ脂質でも脂質の「質」が違います。
しかし脂質は高カロリーですから、魚といっても食べ過ぎればカロリー
オーバーになり太ってしまいます。

肥満は生活習慣病の原因ですから、体重のコントロールも忘れないようにして
生活習慣にとりいれましょう。